ヨーロッパとアジアの「小説・漫画」トレンド（2024〜2025年の見取り図）



 https://alca-nouvelle-aquitaine.fr/sites/default/files/alca/styles/16x9_1920/public/ged/affiches-2025-festival-bd-angouleme.jpg?itok=vcTby32G

ヨーロッパとアジアの「小説・漫画」トレンド（2024〜2025年の見取り図）

近年のトレンドを一言でまとめるなら、**「スマホ起点（縦・短尺・シリーズ）ד癒やし/逃避”と“強いジャンル”の再強化×翻訳とIP展開の加速」**です。地域ごとに強みが違うため、同じ“流行語”でも中身は微妙に変わります。

1) ヨーロッパ：小説は「逃避（ロマンス/幻想）と犯罪」、コミックは「BD＋マンガ＋ウェブトゥーンの三つ巴」

小説トレンド：翻訳熱・ロマンス/幻想・犯罪（とくに“コージー”）

  • 翻訳小説の存在感が上昇。英語圏では「翻訳文学への需要が伸びる」という業界予測が継続的に語られています。 The Bookseller+1

  • “逃避”需要が強く、ロマンス、ロマンタジー、ロマンティック・コメディ、いわゆる“feel-good”系が目立つ、という現場観測が複数のブックフェア文脈で報告されています。 2 SEAS AGENCY | Foreign Rights & More+2chytomo.com+2

  • 犯罪小説（ミステリ/スリラー）は盤石で、さらに“コージー（安心して読める）”が人気として言及されています。 ガーディアン+1

漫画（コミック）トレンド：フランス市場は調整局面でも「多様化」と「プラットフォーム化」

  • フランスを中心に、パンデミック期の急伸後の調整（縮小）が語られつつ、出版社は自社プラットフォームやウェブトゥーン型フォーマットなどデジタル実験を進めています。 ガーディアン

  • 2024年はフランスのBD/マンガ市場が金額・数量ともに減少したという報道もあり、ヒット作の有無・マンガの伸び鈍化が市場に影響したとされています。 Le Monde.fr

  • さらに2025年後半、アングレーム国際漫画祭が運営問題で揺れるなど、イベント/産業側の構造課題も注目点です。 ガーディアン

2) アジア：日本は「デジタル比率7割超」、韓国は「ウェブトゥーン産業化」、中国は「オンライン文学が巨大IP供給源」

日本（漫画）：市場は過去最高、ただし成長は“デジタル牽引＋紙減”

  • 2024年の日本のコミック市場（紙＋電子）は7,043億円で過去最高、電子が**72.7%**を占め、紙は減少という構図が明確です。 出版科学研究所+2Nippon+2

  • トレンド面では、アニメ化などメディア展開が売上を押し上げる現象がより可視化されています（“マンガ→アニメ→原作/関連”の循環）。 The New Yorker

  • 読者嗜好としては、（プラットフォーム別差はある前提で）異世界（いわゆる“異世界転生/転移”）がデジタル側で強いというデータ言及もあります。 Outlook Respawn

  • 一方で、2025年のオリコン集計を踏まえ「ロマンス系への関心が増えている」といった見立ても出ています。 ポリゴン

韓国（漫画）：ウェブトゥーンが“産業の中心”として政策・海外展開と結びつく

  • KOCCA（韓国コンテンツ振興院）のレポートは、ウェブトゥーンをコミック産業の成長領域として捉え、政策・市場の観点で分析しています。 Welcon+1

  • 作品側の特徴は「縦スクロール」「スマホ最適」「カラー前提」で、制作・翻訳・配信のパイプラインが国際展開と相性が良いのが強みです（形式の強さ）。

  • 欧州側でも、ウェブトゥーンが既存コミック市場と比較される“新しい柱”として語られています。 Gremi Editors

中国（小説）：オンライン文学が巨大化し、海外読者と映像/ゲーム化が加速

  • 中国のオンライン文学は、国内ユーザーが2024年に5.75億人、海外ユーザーも3.52億人に達したという報道があります。 Reuters

  • 海外市場の売上も拡大しており、2024年の海外市場規模（売上）を約50.7億元とする報道があります。 Reuters+1

  • さらに「オンライン文学の映像・ゲーム等への“適応（アダプテーション）”が巨額の市場を形成している」という政府系発表もあり、小説＝IP供給源としての色が濃いのが特徴です。 中国国务院

3) 地域横断で強い“共通トレンド”5つ

  1. “癒やし/安心”の需要（コージー、ヒーリング・フィクション）
    └ 韓国のヒーリング系が海外に出ていく流れも指摘されています。 コリアタイムズ+2Asian Review of Books+2

  2. “逃避×強ジャンル”（ロマンス/幻想×スリル＝ロマンタジー、犯罪、ホラー） chytomo.com+1

  3. デジタル・プラットフォーム前提（日本は電子コミックが市場を牽引） 出版科学研究所+1

  4. 翻訳と越境ヒットの加速（翻訳小説の需要増が“業界トピック”化） The Bookseller+1

  5. IP展開の一体運用（中国のオンライン文学→映像/ゲームの巨大連動） 中国国务院+1

4) 書き手・作り手向け：このトレンドを作品企画に落とすなら

  • ヨーロッパ市場を意識する：
    「翻訳されやすい骨格（明快な対立軸＋普遍感情）」を作り、ジャンルは“犯罪”または“癒やし”に寄せる。 The Bookseller+1

  • アジア市場を意識する：
    日本＝シリーズ運用（続刊）とデジタル最適化、韓国＝縦スクロール前提の演出、中国＝IP化（映像化しやすい設定・キャラ・章立て）を最初から設計する。 出版科学研究所+2Welcon+2

最近の動き（参考）
Le Monde.fr
Le marché de la bande dessinée se tasse après des années de splendeur
2025/01/31
Angoulême comics festival in crisis as creators and publishers declare boycott
ガーディアン
Angoulême comics festival in crisis as creators and publishers declare boycott
2025/11/20
Reuters
China's online literature expands overseas readership in cultural export push
2025/06/17
The New Yorker
How Weekly Shōnen Jump Became the World's Most Popular Manga Factory

コメント

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

財閥の現在：経済への影響力とフィクサーの存在

イメージ
  財閥の現在：経済への影響力とフィクサーの存在 はじめに 日本の経済界を舞台裏から操る存在がいるとしたら…？ かつて日本経済を牽引した住友家や三井家といった財閥は、戦後の解体後もなお、巨大な影響力を持っているのでしょうか？ そして、その影で暗躍する「フィクサー」と呼ばれる存在は、本当にいるのでしょうか？ 本稿では、財閥の現状、フィクサーの実態、そして彼らが社会に与える影響について深く考察していきます。 財閥の歴史と現状 住友家と三井家は、江戸時代に創業した歴史ある企業集団です。住友家は銅山開発、三井家は呉服商から始まり、明治時代以降、多角化を進め、鉱業、金融、商社など様々な分野に進出しました。 1 2 戦後、GHQによって財閥は解体されましたが、グループ企業間の繋がりは残り、現在も日本経済に大きな影響力を持つ企業集団として存在しています。 1 2 住友グループは、現在も化学、機械、金融、保険、不動産、建設など幅広い事業を展開しています。 1 三井グループは、三井物産、三井不動産、三井住友フィナンシャルグループといった中核企業を筆頭に、商社、金融、不動産を中心に多岐にわたる事業を展開しています。 2 例えば、三井不動産は、「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」といった商業施設の開発で知られる大手総合ディベロッパーです。 2 また、三井住友フィナンシャルグループは、三井住友銀行などを傘下に置く金融持株会社として、日本経済に大きな影響力を持っています。 2 財閥の経済への影響力 財閥は、巨大な資本力と人的ネットワークを通じて、日本経済に大きな影響力を持っています。 例えば、金融機関を通じて企業への融資をコントロールしたり、グループ企業間で取引を優遇したりすることで、経済活動を左右することができます。 また、政治家への献金やロビー活動を通じて、政策決定にも影響力を行使することが可能です。 財閥の影響力：具体的な事例 財閥の影響力は、様々な形で経済に現れています。例えば、近年注目されている再生可能エネルギー分野への投資においても、財閥系企業が主導的な役割を果たしているケースが多く見られます。また、都市開発やインフラ整備などの大型プロジェクトにおいても、財閥系企業が中心となって事業を推進し、地域経済に大きな影響を与えています。 フィクサーの定義と存在 ...
続きを読む

UbuntuにおけるAI対応はどうなっているか？

イメージ
Ubuntuは、AI（人工知能）や機械学習（ML）分野において、開発から運用まで幅広いサポートを提供しています。特に、オープンソースのMLOpsツールやエッジデバイスへの対応に力を入れており、企業や開発者がAIプロジェクトを効率的に進められる環境を整えています。( Ubuntu Japan , Ubuntu Japan ) 🧠 UbuntuのAI対応状況 1. オープンソースMLOpsツールの提供 Ubuntuでは、AIモデルの開発からデプロイ、運用までを支援するMLOpsツールを提供しています。特に、Charmed KubeflowやCharmed MLFlowなどのツールを活用することで、モデルのライフサイクル管理や自動化が可能です。これにより、企業グレードのAIプロジェクトを迅速かつ効率的に構築できます。 ( Ubuntu Japan ) 2. NVIDIAとの連携強化 Canonicalは、NVIDIAとの協力を通じて、AI開発環境の最適化を進めています。Ubuntuは、NVIDIA Jetson Orin™などのエッジデバイスを公式にサポートしており、エッジAIやロボティクス分野での活用が期待されています。また、NVIDIA AI Enterprise 4.0との統合により、GPU仮想化や大規模なAIモデルのデプロイが容易になっています。 ( Ubuntu Japan , Ubuntu Japan , Ubuntu Japan ) 3. エッジAIへの対応 Ubuntuは、エッジコンピューティング向けに最適化されたUbuntu Coreを提供しています。これは、セキュリティや信頼性を重視した軽量なOSであり、IoTデバイスやエッジデバイス上でのAIアプリケーションの実行に適しています。NVIDIA Jetsonとの組み合わせにより、エッジAIの開発と展開がスムーズに行えます。 ( Ubuntu Japan ) 4. 最新リリースでのAI機能強化 Ubuntu 25.04（Plucky Puffin）では、AI開発を支援する新機能が追加されています。例えば、Intel GPUでのAI処理速度の向上や、AMD SEV-SNP上でのコンフィデンシャルコンピューティングのサポートが強化されています。これにより、クラウドやデータセンターでのAIワークロードの展開が...
続きを読む

地方テレビ局の生き残り戦略

  地方テレビ局の生き残り戦略 はじめに 近年、若者のテレビ離れやインターネットの普及に伴い、地方テレビ局は厳しい状況に立たされています。 1 視聴率の低下、広告収入の減少、人材不足など、多くの課題を抱えています。 2 しかし、地方テレビ局には地域密着性や信頼性といった強みもあります。 3 本稿では、地方テレビ局がこれらの課題を克服し、生き残るための戦略について考察していきます。 地方テレビ局が直面する課題 地方テレビ局が直面する課題は多岐に渡りますが、主なものとして以下の点が挙げられます。 視聴率の低下と若者のテレビ離れ : インターネットやスマートフォンの普及により、若者を中心にテレビ視聴時間が減少しています。 1 特に、YouTubeなどの無料動画サイトやNetflixなどの有料動画配信サービスの利用増加が、テレビ視聴率の低下に拍車をかけています。 1 広告収入の減少 : 視聴率の低下に伴い、広告収入も減少傾向にあります。 2 4 インターネット広告の台頭により、広告主はテレビ以外の媒体にも目を向けるようになっています。 5 さらに、テレビ局はスポンサーに対し、広告効果とコストについてこれまで以上に明確な説明をする必要性が高まっています。 2 スポンサー企業にとって、費用対効果が不明確なテレビ広告費への投資判断は難しくなっており、視聴率データだけでは十分な説明責任を果たせない状況です。 人材不足 : 地方局では、待遇面やキャリアアップの機会が限られることから、人材の確保が難しくなっています。特に、若手の人材確保は喫緊の課題です。 2 デジタル化への対応 : 地上波デジタル化への投資負担に加え、インターネットやモバイル端末に対応したコンテンツ制作や配信体制の構築が求められています。 2 競争の激化 : 規制緩和により、他メディアとの競争が激化しています。 2 キー局系列の枠を超えた番組制作や配信、新たなメディア企業の参入など、競争環境は厳しさを増しています。 成功事例を参考にする 地方局が生き残るためには、他局の成功事例を研究し、そこから戦略を学ぶことが重要です。 以下に、いくつかの成功事例を紹介します。 札幌テレビ『ハレバレティモンディ』 : 北海道のローカル番組でありながら、TVerなどのネット配信を通じて全国的な人気を獲得していま...
続きを読む