統合失調症とうつ病、双極性障害が日々気をつけないといけないこと
統合失調症とうつ病、双極性障害が日々気をつけないといけないこと
精神疾患と付き合いながら生活していると、「毎日どんなことに気をつければいいのだろう」「症状を悪化させないためには何をすればいいのだろう」と悩むことがあります。
統合失調症、うつ病、双極性障害は、それぞれ症状や経過が異なる病気です。そのため、すべての人に同じ生活方法が当てはまるわけではありません。
一方で、3つの病気に共通して大切なのが、
- 睡眠を大切にする
- 生活リズムをできるだけ整える
- 薬を自己判断で中断・増減しない
- ストレスや疲労をため込みすぎない
- 自分の症状の変化に早めに気づく
- 無理をしすぎず、必要なときには人に頼る
- 定期的に医療機関とつながっておく
ということです。
特に精神疾患では、「かなり悪くなってから対処する」のではなく、調子が崩れ始めた小さなサインを早めに見つけることが重要になります。
この記事では、統合失調症、うつ病、双極性障害について、それぞれの日常生活で気をつけたいことと、3つの病気に共通するセルフケアについて詳しく解説します。
1.まず大切なのは「病気と自分を同一視しない」こと
精神疾患について考えるとき、最初に知っておきたいことがあります。
それは、病気があることと、その人自身の価値は別のものだということです。
統合失調症になったからといって、その人の人生が終わるわけではありません。
うつ病になったからといって、本人が「弱い人」になるわけでもありません。
双極性障害があるからといって、本人の人格そのものが気分の波によって決まるわけでもありません。
精神疾患は、症状によって生活にさまざまな影響が出ることがあります。しかし、適切な治療や支援を受けながら、仕事、勉強、家事、趣味、人間関係など、自分なりの生活を続けていくことは可能です。
厚生労働省も、統合失調症について、幻覚や妄想だけではなく、意欲低下、疲れやすさ、集中力の低下、人付き合いの難しさなど、さまざまな「生活のしづらさ」が生じることを説明しています。
だからこそ、
「病気だから何もできない」
ではなく、
「今の自分の状態に合わせて、できることを調整する」
という考え方が大切です。
2.3つの病気に共通して大切な「睡眠」
統合失調症、うつ病、双極性障害と付き合ううえで、特に意識したいのが睡眠です。
睡眠不足になると疲労がたまり、集中力や判断力が落ちたり、ストレスを感じやすくなったりします。
特に双極性障害では、睡眠・覚醒リズムや生活リズムの乱れが気分の変化と関係するため、生活リズムをできるだけ一定にすることが重要とされています。日本うつ病学会の双極症ガイドラインでも、規則正しい生活習慣や睡眠衛生、生活リズムの一定化などが重要とされています。
「眠れない」ことだけを問題にしない
睡眠で注意したいのは、不眠だけではありません。
たとえば、
- 夜更かしが続く
- 昼夜逆転する
- 朝起きられない
- 昼間に長時間寝てしまう
- 眠る時間が毎日大きく違う
- 寝る時間を削って仕事や趣味を続ける
- 何日も睡眠時間が極端に少ない
といった変化にも注意が必要です。
特に双極性障害では、「あまり寝ていないのに疲れを感じない」という状態が、本人にとっては「調子がいい」と感じられる場合があります。
しかし、普段と比べて睡眠時間が明らかに短くなっている場合には、単純に「元気だから大丈夫」と判断せず、気分や行動の変化も一緒に確認することが大切です。
3.「毎日同じでなければならない」と考えすぎない
生活リズムを整えることは重要ですが、完璧を目指す必要はありません。
「毎朝必ず6時に起きなければならない」
「毎日完璧に運動しなければならない」
「食事を一食でも乱したら失敗」
と考えてしまうと、かえって負担になることがあります。
大切なのは、無理なく続けられる範囲で生活を安定させることです。
たとえば、
「昨日より少し早く寝る」
「朝起きたらカーテンを開ける」
「毎日同じくらいの時間に食事をする」
といった小さな行動から始めても構いません。
4.薬は自己判断で中止しない
精神科の治療では、薬物療法が重要な役割を担うことがあります。
ここで非常に重要なのが、
「調子がよくなったから薬をやめる」
という自己判断をしないことです。
統合失調症では、症状が落ち着いた後に自己判断で治療を中断することが再発につながる場合があり、厚生労働省も服薬を含めた治療の継続が重要だとしています。
うつ病でも、症状が改善した後の治療継続について医師と相談することが重要です。厚生労働省の情報でも、抗うつ薬には症状を改善する作用だけでなく、改善した状態を維持する目的もあると説明されています。
双極性障害でも、再発予防のための維持療法が重要とされています。
薬について困ったら「やめる」のではなく相談する
薬を飲んでいて、
- 眠気が強い
- 体重が増えた
- 手が震える
- 胃腸の調子が悪い
- 頭がぼんやりする
- 性機能に変化がある
- 飲むのが大変
- 飲み忘れが多い
- 薬を飲むこと自体に抵抗がある
などの問題があれば、主治医や薬剤師に相談しましょう。
薬には種類によってさまざまな副作用があります。
「副作用がつらいけれど我慢して飲み続ける」
「勝手に中止する」
のどちらかではなく、
「副作用がつらいので、どうしたらいいか相談する」
ことが大切です。
5.統合失調症で日々気をつけたいこと
統合失調症では、幻覚や妄想などの症状だけでなく、意欲低下、疲れやすさ、集中力の低下、人付き合いの難しさなど、生活全体に影響する症状が出ることがあります。
そのため、日常生活では「症状そのもの」だけでなく、生活の変化にも目を向けることが大切です。
① 薬の飲み忘れに注意する
統合失調症では、薬を継続することが治療上重要です。
ただし、飲み忘れは誰にでも起こります。
飲み忘れを何度も責めるのではなく、
- 薬を飲む時間を決める
- カレンダーを利用する
- お薬ケースを使う
- スマートフォンのアラームを利用する
- 家族などに確認してもらう
など、自分に合った方法を探しましょう。
6.幻聴や妄想があるときに気をつけたいこと
統合失調症では、幻聴や妄想が症状として現れることがあります。
ここで本人に対して、
「そんな声は聞こえるはずがない」
「そんなことは全部あなたの妄想だ」
と強く否定してしまうと、本人との信頼関係が崩れることがあります。
一方で、周囲の人が妄想の内容を事実として一緒に信じる必要もありません。
大切なのは、
「そう感じているんだね」
「それは怖かったね」
「今、とても不安なんだね」
と本人が感じている苦痛に寄り添いながら、安全を確保することです。
症状が強くなっている場合は、本人だけで抱え込まず、主治医や医療機関に相談しましょう。
7.統合失調症では「小さな変化」を記録する
再発を防ぐためには、本人にとっての「いつもと違う状態」を知っておくことが役立ちます。
例えば、
- 睡眠時間が減ってきた
- 急に外出しなくなった
- 人と話さなくなった
- 表情が変わった
- 薬を飲まなくなった
- 落ち着かなくなった
- イライラするようになった
- 周囲を強く警戒するようになった
- 幻聴が増えた
- 「誰かに監視されている」などの訴えが増えた
などです。
もちろん、これらがあったからといって必ず再発するとは限りません。
しかし、本人にとっての「いつもと違う変化」を早めに把握することは、医療機関に相談する際にも役立ちます。
8.うつ病で日々気をつけたいこと
うつ病では、
- 気分が落ち込む
- 興味や楽しさを感じにくくなる
- 疲れやすい
- 集中できない
- 自分を責めてしまう
- 睡眠が乱れる
- 食欲が変化する
- 身体が重く感じる
など、心だけではなく身体や生活にもさまざまな変化が現れることがあります。
ここで大切なのは、
「頑張れば元気になる」
と考えすぎないことです。
9.うつ病のときは「頑張りすぎない」
うつ状態では、普段なら簡単にできることでも大きなエネルギーが必要になることがあります。
例えば、
「お風呂に入る」
「着替える」
「料理をする」
「メールを返す」
「買い物に行く」
といった行動さえ、とても疲れることがあります。
そんなときに、
「これくらい普通にできないといけない」
「自分は怠けている」
と責める必要はありません。
体調に合わせて、
「今日はシャワーだけ」
「料理は無理だから簡単なものにする」
「買い物は家族に頼む」
「メールは明日にする」
というように、負担を減らしていくことも大切です。
10.「元気になったから」と急に予定を詰め込みすぎない
うつ状態から少し回復すると、
「今までできなかったことを全部取り戻そう」
と考えることがあります。
しかし、体力や集中力がまだ十分に回復していない状態で、
- 長時間働く
- 大量の予定を入れる
- 遠出を続ける
- 睡眠時間を削る
- 人付き合いを急激に増やす
などをすると、疲労が一気にたまってしまうことがあります。
回復は一直線ではありません。
「昨日できたから今日もできる」
とは限りません。
調子のいい日と悪い日があっても、それだけで「治療が失敗した」ということではありません。
11.うつ病では「自分を責める癖」に気づく
うつ状態では、
「自分はダメだ」
「周りに迷惑をかけている」
「何をやっても意味がない」
「将来もずっとこのままだ」
など、自分や将来について否定的に考えてしまうことがあります。
こうした考えが出てきたとき、
「そんなことを考える自分はダメだ」
とさらに自分を責める必要はありません。
「今はうつ状態だから、こういう考え方になっているのかもしれない」
と一歩離れて考えてみることも一つの方法です。
認知行動療法などの心理療法が役立つ場合もありますので、必要に応じて主治医に相談しましょう。
12.双極性障害で特に大切なのは「気分だけでなく生活リズムを見る」こと
双極性障害では、うつ状態だけでなく、躁状態・軽躁状態が起こることがあります。
そのため、
「落ち込んでいるかどうか」
だけを観察するのではなく、
睡眠時間、活動量、話す量、買い物、人付き合いなどの変化を見ること
が重要になります。
日本うつ病学会のガイドラインでは、双極症について、規則正しい生活習慣、ストレスマネジメント、服薬継続が重要であり、生活リズムを一定にすることなどが推奨されています。
13.双極性障害で注意したい「寝なくても平気」
双極性障害では、躁状態・軽躁状態になると、
- あまり眠らなくても平気に感じる
- 活動量が増える
- 話す量が増える
- 考えが次々に浮かぶ
- 自信が強くなる
- 普段より積極的になる
- 買い物が増える
- 無謀な行動をする
- イライラしやすくなる
などの変化が現れることがあります。
特に注意したいのが、
「寝ていないのに元気」
という状態です。
普通なら睡眠不足によって疲れを感じるところ、本人はむしろ「調子がいい」と感じることがあります。
そのため、
「眠れていないけれど元気だから大丈夫」
と判断せず、普段との違いを確認することが重要です。
14.お金の使い方にも注意する
躁状態・軽躁状態では、普段より活動的になったり、衝動的な買い物などが起きたりすることがあります。
例えば、
「急に高額な商品を買う」
「必要のないものを大量に購入する」
「普段ならしない投資や契約をする」
「借金をしてまで買い物をする」
などです。
自分で「ちょっと使いすぎているかもしれない」と感じたときは、早めに家族や支援者、主治医に相談することが大切です。
本人の尊厳や自己決定を大切にしながら、必要な場合には、お金の管理方法をあらかじめ家族などと相談しておく方法もあります。
15.大きな決断は、気分が大きく変化しているときほど慎重に
双極性障害では、躁状態・軽躁状態のときに、
「仕事を辞めよう」
「会社を始めよう」
「大きな買い物をしよう」
「引っ越そう」
「人間関係を全部変えよう」
など、普段とは違う大きな決断をしたくなることがあります。
もちろん、その決断自体が必ず間違っているとは限りません。
ただし、気分が大きく変化している時期には判断にも変化が生じる可能性があります。
そこで、
「重要な決断は一度持ち帰って、落ち着いてから考える」
というルールを自分で作っておくと役立つ場合があります。
16.アルコールやカフェインにも注意する
精神疾患と付き合っている場合、アルコールなどを使って眠ろうとしたり、不安を紛らわせようとしたりすることがあります。
しかし、アルコールは睡眠や気分に影響を及ぼすことがありますし、精神科の薬との組み合わせについて注意が必要な場合もあります。
また、カフェインを大量に摂取すると、眠りにくくなったり、動悸や不安感につながったりすることがあります。
特に双極性障害では、生活リズムや睡眠を安定させることが重要なので、カフェインやアルコールの摂取についても主治医と相談して、自分に合ったルールを決めるとよいでしょう。
日本うつ病学会の双極症ガイドラインでも、アルコールやカフェイン、生活リズムなどを含めた生活習慣への配慮が挙げられています。
17.タバコについても考えてみる
喫煙している人は、「タバコを吸うと気持ちが落ち着く」と感じることがあります。
しかし、健康全体を考えると、禁煙・減煙について検討することには意味があります。
ただし、精神疾患の治療中に急激に生活習慣を変えることが大きなストレスになる場合もあります。
「今日から全部変える」
と無理をするのではなく、
「減らしたいけれど、どうすればいいか」
を医師や薬剤師などに相談してみるのも一つの方法です。
18.食事も「完璧」を目指さない
精神的な調子が悪いと、
- 食欲がなくなる
- 食事を作るのが面倒になる
- 食べることを忘れる
- 甘いものを大量に食べる
- 夜中に食べてしまう
など、食生活が変化することがあります。
まずは「毎食完璧な栄養バランス」にこだわりすぎず、食べられるものを食べることも大切です。
体重の増減が大きい場合や、薬の影響が疑われる場合には、主治医や管理栄養士などに相談しましょう。
19.運動は「できる範囲」で
適度な身体活動は健康維持に役立ちます。
ただし、
「精神疾患を治すために毎日必ず運動しなければならない」
と考える必要はありません。
例えば、
- 5分散歩する
- ベランダに出る
- 部屋の掃除をする
- 軽くストレッチする
- 買い物に歩いて行く
などでも構いません。
厚生労働省も、健康づくりのために適度な運動やバランスの取れた食生活、禁煙などを推進しています。
重要なのは、**「できるときに、無理なく続ける」**ことです。
20.SNSやインターネットとの付き合い方
現代では、SNSや動画、ニュース、ゲームなどが生活の一部になっています。
これらが悪いということではありません。
ただし、
「夜中までスマートフォンを見続ける」
「嫌なニュースを何時間も調べる」
「他人と自分を比較し続ける」
「SNS上の人間関係に強く振り回される」
といった状態になっているなら、使い方を見直してみましょう。
特に睡眠が乱れているときは、夜間のスマートフォン使用がさらに睡眠時間を削っていないか確認してみることが大切です。
21.ストレスを「ゼロ」にしようとしない
精神疾患があるからといって、人生からすべてのストレスをなくすことはできません。
仕事、学校、人間関係、お金、家族、将来など、さまざまな悩みがあります。
大切なのは、
「ストレスをゼロにする」より「ストレスが大きくなりすぎる前に対処する」
ことです。
例えば、
「今日は疲れたから予定を減らす」
「苦手な人との連絡を明日にする」
「家族に手伝ってもらう」
「主治医に相談する」
「休む」
という選択肢を持っておきましょう。
22.自分の「調子が崩れるサイン」を知っておく
これは非常におすすめしたい方法です。
自分が悪化するときに、最初にどんな変化が出るのかを記録しておきます。
例えば、
自分の早期サイン
- 眠れなくなる
- 朝起きられなくなる
- 食欲がなくなる
- 人と話したくなくなる
- 外出したくなくなる
- イライラする
- 考えがまとまらない
- 不安が強くなる
- 仕事や学校に行くのが急につらくなる
- 買い物が増える
- 話す量が増える
- 妙に活動的になる
- 幻聴が増える
- 周囲を強く警戒する
などです。
そして、
「このサインが2~3日続いたら主治医に相談する」
「眠れない日が続いたら家族に知らせる」
など、自分なりの対応ルールを決めておきます。
23.「調子がいいとき」に対策を作っておく
調子が悪くなってから対策を考えるのは大変です。
そのため、比較的安定しているときに、
「自分が悪くなったらどうしてほしいか」
を家族や支援者と話し合っておくと安心です。
例えば、
- 誰に連絡するか
- どこの病院に行くか
- 薬について誰に相談するか
- 眠れなくなったらどうするか
- 仕事や学校にはどう連絡するか
- お金の問題が出たときどうするか
- 緊急時に誰に連絡するか
などです。
24.家族や周囲の人に知っておいてほしいこと
本人だけでなく、家族や友人、職場の人など周囲の人の理解も大切です。
しかし、周囲の人が「監視役」になってしまう必要はありません。
「ちゃんと薬を飲んだ?」
「今日は何時間寝た?」
「また症状が出てるんじゃない?」
と毎日細かく確認され続けると、本人にとって大きな負担になる場合があります。
大切なのは、
本人と一緒に状態を確認する
という姿勢です。
例えば、
「最近眠れてる?」
「少し疲れているように見えるけど、大丈夫?」
「何か手伝えることある?」
と声をかけるほうが、話しやすいことがあります。
25.「本人の話を否定しない」ことも大切
特に統合失調症では、幻聴や妄想などについて本人と周囲の認識が大きく異なる場合があります。
そのとき、
「そんなことは絶対にない」
と頭ごなしに否定するのではなく、
「あなたにはそう感じられているんだね」
と本人が感じている苦痛を受け止めることが大切です。
ただし、危険な行動につながっている場合には、安全を優先して医療機関などに相談する必要があります。
26.「病気のことを話せない」という悩みも珍しくない
精神疾患には、まだ社会的な偏見や誤解が存在します。
そのため、
「職場に言うべきか」
「友達に話すべきか」
「家族以外には知られたくない」
と悩む人もいます。
病気について誰にどこまで話すかは、本人が決めてよいことです。
ただし、治療や安全に関係する情報については、医療者に正確に伝えることが大切です。
27.通院日は「質問を準備しておく」
診察室では緊張して、聞きたかったことを忘れてしまうことがあります。
そこで、スマートフォンなどに、
- 最近の睡眠時間
- 気分の変化
- 薬の飲み忘れ
- 副作用
- 食欲
- 仕事や学校の状況
- 困っていること
- 気になっている症状
などを簡単に記録しておくと便利です。
「最近ちょっと調子が悪い」
だけではなく、
「先週から毎日4時間くらいしか眠れていません」
「薬を飲むと昼間の眠気が強いです」
など、具体的に伝えられると診察にも役立ちます。
28.調子の記録は「完璧に書かなくていい」
日記を毎日何ページも書く必要はありません。
例えば、
睡眠:6時間
気分:普通
食欲:普通
薬:飲んだ
外出:買い物
気になる症状:なし
これだけでも十分です。
双極性障害では、日本うつ病学会も睡眠・覚醒リズム表やライフチャートなどのツールを紹介しています。
自分に合う方法で、無理なく続けることが大切です。
29.仕事や学校は「100%できるか」だけで考えない
精神疾患があると、
「以前と同じように働けるか」
「学校に毎日行けるか」
という悩みが出てきます。
しかし、働き方や学び方にはさまざまな形があります。
例えば、
- 勤務時間を短くする
- 在宅勤務を利用する
- 休憩を増やす
- 業務量を調整する
- 通院時間を確保する
- 復職を段階的にする
- 学校で配慮を相談する
などです。
「以前の自分と同じ状態に戻ること」だけを目標にするのではなく、
今の自分が安定して続けられる生活を作る
ことも大切です。
30.休むことは「負け」ではない
精神疾患では、休むことが必要になる場合があります。
仕事を休む。
学校を休む。
予定を断る。
人付き合いを減らす。
家事を家族に頼む。
こうしたことを「怠け」と考えてしまう人もいます。
しかし、体調が悪いときに休むのは、身体の病気と同じように必要な対処です。
休むことによって生活を立て直し、その後の活動につなげることもできます。
31.特に注意したい「急激な変化」
精神疾患では、少しずつ状態が変わることもあれば、比較的短い期間に大きく変化することもあります。
例えば、
- ほとんど眠らなくなった
- 急激に活動的になった
- 強い不安や恐怖が出てきた
- 幻聴や妄想が強くなった
- 極端に落ち込むようになった
- 食事がほとんど取れなくなった
- 日常生活が急にできなくなった
- 自分を傷つけたい気持ちが出てきた
- 消えてしまいたいと感じるようになった
などです。
こうした変化がある場合には、「もう少し様子を見よう」と一人で抱え込まず、主治医や医療機関に相談してください。
32.「死にたい」「消えたい」という気持ちが出たとき
これは特に重要なポイントです。
うつ病に限らず、統合失調症や双極性障害などの精神疾患でも、状態によっては自殺念慮などが生じることがあります。
もし、
「死にたい」
「消えたい」
「自分を傷つけたい」
「もう生きていたくない」
といった気持ちが強くなった場合には、一人で抱え込まないでください。
主治医、家族、信頼できる人、地域の相談機関などに早めに伝えることが大切です。
今すぐ自分を傷つける危険がある場合は、通常の予約日を待たず、救急医療など緊急の支援につながってください。
日本では、厚生労働省が「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556を案内しており、電話した地域の公的な相談機関につながります。相談時間は地域によって異なります。厚生労働省は電話以外にもSNSなどの相談窓口を案内しています。
33.「調子が悪くなったら病院に行く」ではなく「病院とつながり続ける」
精神疾患では、症状が落ち着くと、
「もう治ったから病院に行かなくてもいい」
と思ってしまうことがあります。
しかし、統合失調症では治療中断が再発につながる場合があり、双極性障害でも再発予防のための維持療法が重要とされています。
もちろん、通院頻度や治療内容は人によって異なります。
だからこそ、
「症状があるときだけ病院へ行く」
のではなく、
「自分の状態を医療者と一緒に確認しながら治療を続ける」
という考え方が大切です。
34.3つの病気に共通する「毎日のチェックリスト」
最後に、毎日確認しやすいチェックリストをまとめます。
朝
□ 昨日は眠れたか
□ 起きる時間が大きくずれていないか
□ 薬を飲む必要があるか
□ 朝食をとれそうか
□ 今日の予定を詰め込みすぎていないか
昼
□ 疲れが強くなっていないか
□ 食事をとったか
□ 水分をとっているか
□ 無理をしすぎていないか
□ 気分が普段と違わないか
夜
□ 今日の気分はどうだったか
□ いつもと違う症状はなかったか
□ 薬を忘れていないか
□ 明日の予定を詰め込みすぎていないか
□ 夜更かししていないか
そして、最も大切なのが、
「今日はいつもの自分と何か違わなかったか?」
という確認です。
35.病気ごとの重要ポイントを簡単にまとめると
統合失調症
特に意識したいのは、
- 服薬・通院を続ける
- 睡眠を確保する
- 疲労やストレスをためすぎない
- 幻聴や妄想などの変化を記録する
- 生活リズムをできるだけ安定させる
- 再発のサインを本人・家族で把握する
- 症状が強くなったら早めに相談する
ということです。
うつ病
特に意識したいのは、
- 無理に頑張りすぎない
- 睡眠を大切にする
- 食事や水分を確保する
- 「自分はダメだ」と責めすぎない
- 調子の悪い日は予定を減らす
- 回復してきても急に活動量を増やしすぎない
- 薬を自己判断で中断しない
- 希望が持てなくなったときは一人で抱えない
ということです。
双極性障害
特に意識したいのは、
- 睡眠時間を大きく変えない
- 生活リズムをできるだけ一定にする
- 薬を自己判断で中止しない
- 「寝ていないのに元気」という状態に注意する
- 活動量の急激な増加に注意する
- 衝動買いや大きな契約などに注意する
- 気分の波を記録する
- 躁状態・軽躁状態の早期サインを知っておく
- ストレスや刺激をためすぎない
ということです。
日本うつ病学会の資料でも、双極症では生活リズム、睡眠、ストレスマネジメント、服薬継続などが重要なポイントとして挙げられています。
36.一番大切なのは「完璧に生活すること」ではない
ここまでたくさんの注意点を紹介しました。
しかし、この記事を読んで、
「こんなにたくさんのことを毎日やらなければならないの?」
と思った人もいるかもしれません。
大丈夫です。
全部を完璧にやる必要はありません。
精神疾患と付き合ううえで大切なのは、
100点満点の生活をすることではなく、調子を大きく崩さない生活を少しずつ作っていくこと
です。
昨日はできたことが、今日はできない。
そんな日があっても構いません。
毎日決まった時間に眠れない日があっても構いません。
食事が簡単なものになる日があっても構いません。
誰かに助けてもらう日があっても構いません。
大切なのは、「できなかった自分」を責めることではなく、
「今の自分には何が必要なのか」
を考えることです。
37.病気と付き合いながら、自分らしい生活を作っていく
統合失調症、うつ病、双極性障害は、それぞれ特徴の異なる病気です。
しかし、どの病気でも、
「早めに変化に気づく」
「無理をしすぎない」
「睡眠を大切にする」
「治療を継続する」
「一人で抱え込まない」
ということは大切なポイントになります。
そして、もう一つ忘れてはいけないのが、
「病気を治すことだけが人生の目的ではない」
ということです。
趣味を楽しむ。
好きな音楽を聴く。
漫画を読む。
ゲームをする。
友達と話す。
家族と過ごす。
仕事をする。
学校に通う。
散歩する。
何もせずゆっくりする。
そうした一つ一つの時間も、その人の生活の大切な一部です。
治療を続けながら、自分にとって無理のないペースで「自分らしい生活」を作っていくことが大切です。
まとめ
統合失調症、うつ病、双極性障害と付き合っていくために、毎日の生活で特に意識したいのは次のことです。
1.睡眠を大切にする
睡眠時間や就寝・起床時間が大きく乱れていないか確認しましょう。
2.生活リズムを整える
食事、睡眠、活動、休息などを無理のない範囲で安定させましょう。
3.薬を自己判断で変更しない
調子が良くても、悪くても、薬については主治医・薬剤師に相談しましょう。
4.小さな変化を見逃さない
「眠れない」「人と話したくない」「活動量が急に増えた」など、自分特有のサインを知っておきましょう。
5.無理をしすぎない
「できること」と「今できないこと」を分けて考えましょう。
6.ストレスをため込みすぎない
ストレスをゼロにする必要はありませんが、大きくなりすぎる前に休みましょう。
7.アルコールやカフェインなどにも注意する
特に睡眠や薬との関係について、必要なら医療者に相談しましょう。
8.周囲の人を頼る
一人で全部を抱える必要はありません。
9.定期的に医療機関とつながる
症状が落ち着いているときも、治療について主治医と相談しながら進めましょう。
10.「完璧」を目指さない
一番大切なのは、毎日100点を取ることではありません。
昨日より少し楽に過ごせる方法を見つけること。
それだけでも十分な一歩です。
精神疾患との生活は、調子のいい日ばかりではありません。
できる日もあれば、できない日もあります。
そんなときに「自分はダメだ」と考えるのではなく、
「今日は少し休もう」
「誰かに相談してみよう」
「明日またやってみよう」
と考えられることが、長く病気と付き合っていくうえで大切なのではないでしょうか。
病気があっても、その人の人生には、病気以外のたくさんのものがあります。
治療、休養、仕事、家族、友人、趣味、好きなこと、将来の夢。
それらを大切にしながら、自分に合ったペースで生活を組み立てていきましょう。
参考・公的情報
厚生労働省は、精神疾患に関する情報や相談窓口を公開しています。また、日本うつ病学会は双極症の診療ガイドラインや、患者・家族向けの「双極症とつきあうために」などの資料を公開しています。
睡眠については、厚生労働省が「健康づくりのための睡眠ガイド2023」などを公開しています。
もし心の状態が悪化し、一人で抱えることが難しいときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」などから、電話・SNSを含む相談先を探すことができます。

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