新潟県の食品廃棄物への取り組み

 


新潟県の食品廃棄物への取り組み

はじめに

豊かな自然に恵まれ、食の宝庫として知られる新潟県。多種多様な農産物や海産物が生産され、私たちの食卓を彩っています。しかし、その一方で、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう「食品ロス」の問題も存在します。

本稿では、新潟県における食品廃棄物への取り組みについて、特に食品や増産物の廃棄物から薬を作っている会社に焦点を当てながら解説していきます。

新潟県の食品廃棄物発生量

新潟県では、年間約6.6万トンの食品ロスが発生していると推計されています 1。これは、県民一人ひとりが毎日おにぎり1個分のご飯を捨てていることに相当します。食品ロスの約半分は家庭から発生しており、食べ残し、直接廃棄、過剰除去の3つに分類されます 1。

令和2年度の調査によると、食品製造業における食品ロス量の割合は全体の23%、事業系全体の44%を占めています。2030年度の食品ロス半減目標の達成には、食品製造業における発生抑制が不可欠であり、具体的な要因分析と対策の検討が求められています 2。

新潟県における食品廃棄物削減に向けた取り組み

新潟県では、食品ロス削減に向けて、県、市町村、企業、そして県民が一体となって様々な取り組みを行っています。

政策と計画

  • 「新潟県食品ロス削減推進計画」: 2030年度を目標年次とし、県内で発生するフードロス量を7.3万トン以下にすることを目標とした計画です 3。食品リサイクル法に基づき、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用等を促進しています。計画では、食品ロス削減に向けた具体的な目標設定や、事業者・消費者への意識啓発活動、食品リサイクルの推進などが盛り込まれています。

  • 燕市食品ロス削減推進計画: 燕市では、事業系食品廃棄物等の発生状況を把握するため、食品関連事業者や関係団体へのアンケート調査や聞取調査などを実施しています 5。市内の食品ロス削減に向けた具体的な取り組みを推進しています。

県民運動と啓発活動

  • 「残さず食べよう！にいがた県民運動」: 家庭や外食での食べ残しを減らすための啓発運動です 1。運動では、外食時に食べきれる量のメニューを選ぶことや、小盛り・ハーフサイズメニューの利用、食べ残しを持ち帰るための容器の利用などを推奨しています。また、飲食店には食べ残し削減を促すポスターやステッカーの掲示を呼びかけ、食品ロス削減の意識向上を図っています。

  • 学習動画: 未就学児・小学校低学年向けに、ごみ減量・フードロス問題に関する学習動画を作成し、食育活動を実施しています 6。

企業との連携

  • 連携協定: フードロス削減を強化するため、新潟県と新潟市は株式会社クラダシと連携協定を締結しました 7。クラダシは、消費可能でありながら通常の流通ルートでの販売が困難な商品を買い取り、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」で販売することでフードロス削減に取り組む企業です。この連携により、県内におけるフードロス削減の取り組みがさらに強化されることが期待されます。

補助金制度

  • 食品リサイクル法に基づく補助金: 食品関連事業者を対象に、発生抑制、減量化、再生利用等を支援する補助金制度を設けています 8。

セミナー開催

  • 食品ロス削減推進セミナー: 食品関連事業者を対象に、食品ロス削減の推進を目的としたセミナーを開催しています 10。セミナーでは、事業系食品ロス削減の優良事例や、未利用食品の有効活用などについて紹介しています。





Initiative

Description

Impact

新潟県食品ロス削減推進計画

2030年度を目標年次とし、県内で発生するフードロス量を7.3万トン以下にすることを目標とした計画

食品関連事業者による食品循環資源の再生利用等を促進

燕市食品ロス削減推進計画

事業系食品廃棄物等の発生状況を把握するため、食品関連事業者や関係団体へのアンケート調査や聞取調査などを実施

市内の食品ロス削減に向けた具体的な取り組みを推進

残さず食べよう！にいがた県民運動

家庭や外食での食べ残しを減らすための啓発運動

外食時の食べ残し削減、小盛り・ハーフサイズメニューの利用促進

学習動画

未就学児・小学校低学年向けに、ごみ減量・フードロス問題に関する学習動画を作成し、食育活動を実施

子供たちの食品ロス削減意識の向上

連携協定

フードロス削減を強化するため、新潟県と新潟市は株式会社クラダシと連携協定を締結

県内におけるフードロス削減の取り組み強化

食品リサイクル法に基づく補助金

食品関連事業者を対象に、発生抑制、減量化、再生利用等を支援する補助金制度

食品関連事業者による食品ロス削減の取り組みを促進

食品ロス削減推進セミナー

食品関連事業者を対象に、食品ロス削減の推進を目的としたセミナーを開催

事業系食品ロス削減の優良事例や、未利用食品の有効活用などを紹介

これらの多岐にわたる取り組みによって、県民の食品ロスに対する意識は高まりつつあります 11。

食品廃棄物を活用している企業の事例

新潟県内では、食品廃棄物を有効活用する企業も増えています。

  • 竹徳かまぼこ株式会社: インドエビの頭部を食品加工会社に販売し、「インドエビ油」として活用しています 3。

  • イトーヨーカドー丸大新潟店: 店内で発生した食品廃棄物を堆肥化し、直営農場で使用しています。栽培された農作物は、店舗で販売することで、資源の循環利用を実現しています 3。

  • 越後ど発酵共同プロジェクト: 長岡市の酒蔵、味噌醸造会社、醤油会社、アクアポニックス会社が共同で立ち上げたプロジェクトです。酒粕と規格外レタスを再利用し、「古志漬けの素」を開発しました 12。

これらの企業の取り組みは、食品廃棄物の削減だけでなく、新たな商品開発や地域経済の活性化にも貢献しています。

食品廃棄物のリサイクル方法としては、飼料化、堆肥化、メタン発酵など、様々な方法があります 13。飼料化は、食品廃棄物を家畜の飼料として有効活用する方法です。堆肥化は、微生物の働きを利用して食品廃棄物を発酵・分解させ、有機肥料として活用する方法です。メタン発酵は、食品廃棄物からバイオガスを生成し、エネルギーとして利用する方法です。これらのリサイクル方法を導入することで、食品廃棄物の削減、資源の有効活用、環境負荷の低減などが期待できます。

食品や増産物の廃棄物から薬を作っている会社について

今回の調査では、新潟県内で食品や増産物の廃棄物から薬を作っている会社に関する情報は確認できませんでした 14。

医薬品製造には、厳格な品質管理や安全基準への適合が求められるため、食品廃棄物を原料として利用するには、高度な技術や設備が必要となります 15。また、廃棄物に含まれる不純物の除去や、有効成分の抽出・精製などのプロセスにも課題があります。これらの課題を克服し、安全で有効な医薬品を製造するためには、さらなる研究開発が必要となります。

しかし、全国的には、食品廃棄物を有効活用する研究開発が進められています。例えば、果物の皮や種子から抽出される成分を医薬品や化粧品の原料として利用する研究や、野菜くずからバイオ燃料を生成する研究などがあります 16。これらの研究開発がさらに進展することで、将来的には新潟県内でも食品廃棄物から薬を製造する企業が登場する可能性があります。

新潟大学における食品廃棄物に関する研究活動

新潟大学では、食品廃棄物に関する様々な研究活動が行われています。

  • 食品・作物資源利用学研究室: 米の品質利用研究などを実施しています 17。

  • 環境報告書: 新潟大学が発行する環境報告書では、持続可能な社会の構築に向けて、食と自己との関わり方を選択・判断する子供の育成について言及しています 18。

これらの研究活動は、食品廃棄物の新たな活用方法の開発や、食品ロス削減に向けた技術革新に貢献することが期待されます。

新潟県における食品廃棄物問題の現状と課題、今後の展望

新潟県では、食品ロス削減に向けた取り組みが着実に進展していますが、依然として課題も残されています。

  • 食品廃棄物発生量の把握: 事業系・産業系の食品廃棄物発生量の詳細なデータ収集が課題です 5。より詳細なデータ収集により、効果的な食品ロス削減対策を立案することができます。

  • 食品リサイクルの推進: 飼料化や堆肥化など、食品廃棄物の再生利用をさらに促進する必要があります 4。再生利用技術の向上や、リサイクル製品の販路拡大などが課題となります。

  • 県民への意識啓発: 食品ロス問題に対する県民の理解を深め、家庭での食品ロス削減を促進する必要があります 4。

これらの課題を解決するためには、行政、企業、そして県民一人ひとりの協力が不可欠です。行政は、食品ロス削減に向けた政策や計画を策定し、企業や県民への支援を行う必要があります。企業は、食品廃棄物の発生抑制やリサイクルに取り組むとともに、消費者への啓発活動を行う必要があります。そして、県民一人ひとりが食品ロス問題を自分事として捉え、日々の生活の中で食品ロスを削減するための行動を実践していくことが重要です。

結論

新潟県では、食品ロス削減に向けた様々な取り組みが行われており、県民の意識も高まりつつあります。しかし、依然として課題も残されており、行政、企業、そして県民一人ひとりの継続的な努力が必要です。

食品廃棄物を有効活用する研究開発や企業の取り組みは、食品ロス削減だけでなく、新たな産業の創出や地域経済の活性化にもつながります。

食品ロス削減は、環境問題、経済問題、社会問題など、様々な側面を持つ複雑な問題です。新潟県では、これらの問題を総合的に解決するために、行政、企業、大学、研究機関、そして県民が連携し、持続可能な社会の実現に向けて努力を続けていく必要があります。

今後も、新潟県が食品ロス削減の先進県として、持続可能な社会の実現に貢献していくことを期待します。

引用文献

1. 「残さず食べよう！にいがた県民運動」を進めています～減らそう ..., 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shigenjunkan/nokosazutabeyou.html

2. 「食品製造業の食品ロス削減対策に対する調査事業」 報告書, 1月 21, 2025にアクセス、 https://kankyo.shokusan.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/r4-syokuloss-rpt_all.pdf

3. 新潟市環境優良事業者等認定一覧（食品ロス削減部門） 新潟市, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.city.niigata.lg.jp/kurashi/gomi/jigyousha/jigyokei/kankyoyuryojigyosha/ninteijigyosha.html

4. 新潟県食品ロス削減推進計画を策定しました - 新潟県ホームページ, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shigenjunkan/foodloss-plan.html

5. www.city.tsubame.niigata.jp, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/10/keikaku.pdf

6. クラダシ、新潟全域でのフードロス削減強化に向け、新潟県・新潟市と連携協定を締結 - PR TIMES, 1月 21, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000264.000014485.html

7. クラダシ、新潟全域でのフードロス削減強化に向け、新潟県・新潟市と連携協定を締結, 1月 21, 2025にアクセス、 https://corp.kuradashi.jp/news/22-03-31-2/

8. 令和6年度3R取組企業支援募集のご案内（令和6年度の募集は終了しました） - 新潟県ホームページ, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shigenjunkan/1356800415652.html

9. 県が廃棄物の発生抑制・リサイクル等を支援する補助金事業を実施しています, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.eco-niigata.or.jp/topics/%E7%9C%8C%E3%81%8C%E5%BB%83%E6%A3%84%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F%E6%8A%91%E5%88%B6%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB%E7%AD%89%E3%82%92%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%81%99%E3%82%8B-2/

10. 令和６年度新潟県事業系食品ロス削減推進セミナー - YouTube, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=acEZM9aTWyc

11. 新潟県食品ロス削減ポータルサイトへようこそ - 新潟県ホームページ, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.pref.niigata.lg.jp/site/niigata-foodloss/

12. 「越後ど発酵」共同プロジェクト【食品ロスを発酵でアップ ..., 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.nico.or.jp/shien/59418/

13. 食品廃棄物とは？ ～産業廃棄物？一般廃棄物？廃棄物処理の観点から解説します！, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.etod.co.jp/article/blog.html/a131

14. 食品リサイクルの会社・企業一覧（全国）｜Baseconnect, 1月 21, 2025にアクセス、 https://baseconnect.in/companies/keyword/c12eaf15-d56a-48d8-90a2-af831406485a

15. 食品医薬品業界での取り組み | 三菱ケミカルグループ株式会社 - MCAM, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.mcam.com/ja/industries/food-pharma

16. 食品廃棄物の処理と利用, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fkagaku17.pdf

17. 食品・作物資源利用学研究室 - 新潟薬科大学, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.nupals.ac.jp/laboratory/6549/

18. 環境・社会報告書 - 新潟大学, 1月 21, 2025にアクセス、 https://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2023/11/kankyouhoukokusho2023.pdf

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